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【2025/05/12 09:28 】 |
2-end
 赤く短い髪を揺らし、靴底を鳴らしながら無機質な廊下を一人歩いて行く。一定のリズムを刻むその音が、廊下の奥へと反響する。
 『第二調整室』と書かれたプレートのあるドアの前に立つと、刹那の間隔後に左の壁へとその姿を吸い込ませて、来訪者を室内へと誘う。室内は様々な波形やデータを映し出すモニタや機材類が並べられていた。ドアのスライド音に反応に、モニタの前に座っていた二名の白衣の人物が来訪者の方へ向き直る。簡易な敬礼を交わし再びモニタへと視線を戻した。

「様子はどうかしら?」

 赤髪の来訪者は、部屋の中央に置かれたベッドの上で眠っている少女が映し出されているモニタを覗き込む。
 ブリタニア軍第四種訓練生同士で行われた最終訓練が終了し、その中で生き残った数名が同じようにベッドの上で治療を受けている。

「今の所は安静……という所ですが、目覚めた時どうなるかは」
「そう。でも私の目に狂いは無かっただろ?あの戦闘での動き、自分より上回る操縦技術の相手にも臆する事無く、そして勝ったあの姿を」
「はい。キャロル大尉の読みは的中しましたね」

 キャロルは得意げに鼻を鳴らすと、デスクの上においてあるファイルを手にとった。第176試験体と書かれたハードカバーのファイルを開くと、試験体となった少女の写真と名前が記載されている。今までの経歴等が網羅されたその資料を、興味なさげにページを捲っていく。
 家族構成やどこから集めてきたのか交友関係等が網羅されている。パラパラと捲り最後のページまで目を通したキャロルは、最初のページへ戻ると彼女が笑顔で写る写真をじっと見つめた。栗色の長い髪を指でなぞり、双眸に透き通るライムグリーンの瞳をじっと見つめる。
綺麗と言うよりもかわいいという言葉が似合う笑顔、そこから最も遠い場所が彼女の今の居場所。そう思うとこみ上げてくる感情に口元を歪めて、手に持ったファイルを閉じてそっとデスクの上に置いた。
 今のキャロルには彼女の過去がどうなろうと、自分の目的の為にはどうでもいい事である。

――リーフェット……ようやく、ようやく君を取り戻せそうだよ

 眠っているリーフェットが映るモニタをじっと見つめ、キャロルは静かに目を閉じた。
 大尉という肩書きを持つキャロル・バーパント。彼は第四種訓練生としてリーフェットに近づいていたが、正確には違う。各第四種訓練生につけられる担当の一人であり、表立って知られていないブリタニアの研究機関に属する軍人というのが彼女の本当の姿。
 素質のあるもの、いなくなっても問題無い人間を連れてきては人体を使った実験を行っている。肉体に限らず精神や脳までもいじる非道な彼等の存在はブリタニアでも一部の人間しか知る者はいない。表立って目立つのはKMFの開発する部門。それとは反対にキャロル達は、KMFではなく兵隊を開発する部門である。

――試験体の中で瞳が彼女にそっくりな君を見つけた時、私は信じていない神に感謝を述べた程興奮した

「大尉」

 白衣を着た一人が、波長が表示されているモニタを見ながら淡々とした口調でキャロルを呼ぶ。キャロルがゆっくり近づくと映し出されている波長が徐々に変化を始めているのが見て取れた。

「この波長は?」
「第176試験体の意識が戻ります」
「そうか」

 キャロルはベットが映し出されているモニタに視線を移す。かすかにだが別途で寝ているリーフェットの体が微妙に動き始めていた。その彼女をモニタ越しに見つめながらキャロルは静かに口を開いた。

「さようなら、シャーリー・フェネット……。おはよう、|リーフェット・ネーシャ《マイフレンド》」

 モニタに背を向けたキャロルは、目覚めたリーフェットがいる隣の部屋へと歩みを進めた。
 若き日に戦場で失った親友を再び手に入れるために……。


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【2011/03/31 19:26 】 | コードギアス 反逆の狂奏愛歌 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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