着艦したカレンの操縦するKMF『紅蓮』は、他に搭載されているKMFより明らかに強い色を放っているまさに異色のそれ。さらにそれに乗るカレンのパイロットスーツも紅蓮と同じ色であり、持ち前のプロポーションも合わせて他の兵士達からいろいろな目で見られている。
「ふぅ……」
様々な思いをこめてため息を漏らす。この行為もすでに毎回の事であり慣れたものである。
「あ~シュタットフェルト」
この艦を指揮している上官の男が格納庫から船内への通路の入り口に立っていた。自分の体を舐めるような視線に、少しだけ浮つく笑みを浮かべる口元。それだけで吐き気と怒りがこみ上げてくるが、奥歯を噛み締めそれをぐっと堪える。
「この後どうかね?打ち合わせでも」
このエリア十一に配属されてからと言うもの、上官からは何かしら誘いの言葉を投げかけられる度に、ブリタニア人の醜態さに怒りを覚える。そんな彼等の下につく事しかできない自分の不甲斐なさも同時に感じさせられていた。
こんな場所からは一刻も早く去りたい、その気持ちだけで彼の言葉を素通りし足早に彼から距離を開ける。背後から聞こえた鼻を鳴らす強がりな声を聞き流し、すぐ様間内のシャワー室へと向かった。
スイッチ一つで設定した温度のお湯が天井の噴出し口から、体へと注ぎ流れる。顔を上に向け、全身で浴びるシャワーはほんの少しだけ戦いの疲れを落としてくる。そして自分の希望も絶望も……。
今はブリタニアの軍族とはいえ、元黒の騎士団のメンバーだと言う事はブリタニアの一部の人間にしかばれてはいない。そしてこの艦の中に、一兵卒として送り込まれている一部の人間が監視している事をカレンは知っていた。機密情報局……月に1度みんなと通話できる機会の時に顔を合わせる彼等から、上官に体を触られ感情のまま殴りつけた事を機密情報局の人間が知っていた。それはまだ配属されて間もなくの事で、自分もみんなも結局は捉えられている状況に代わりがない事を再認識した。
――このシャワー室も監視されている……
始めの内は恥辱を感じたものの、今では見たいなら見れば言いと開き直れている。みんなを守る為なら体を見られる事などたいした事ではなかった。
私がみんなを守る、救ってみせる、それが今の私のすべてでその為にブリタニアの犬に成り下がった。成り下がってでもみんなを見捨てる事なんてできやしない。
――ゼロ…いえルルーシュ
あの最後の日、彼――ルルーシュの妹で盲目に足が不自由だと思っていたナナリーから聞いたゼロの正体。未だに信じられない。いや今までの疑問点をつなげるとルルーシュがゼロという可能性はかなり高い上、妹のナナリーに言われたとあっては信じるのが正しいのかもしれない。
――それでもあたしは……
信じたい気持ち半分、直接ルルーシュに会って問いただしたい。だがルルーシュやナナリーの居場所は不明であり、確かめるすべが無いのが現状なのだ。
「だめだめ」
シャワーを止めて顔を左右に振り陰鬱な感情を振り払う。別のスイッチを押し今度は室内の壁から温風な風が吹きだし、全身の水滴を弾き飛ばす。ドライヤーいらずで髪も乾かすと、室内に設置されている密閉扉を開き、衣類と下着を取り出す。しゅるしゅると生地の擦り合わさる音を聞きながら、素早く着替えシャワー室のドアを開けた。
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