親同士が勝手に持ってきた縁談話。子供の私たちには理解ができない難しい内容……
 なんとなく理解できたのは、二人は将来「けっこん」するという約束がされたという事。
 子供だからこそ実感が無く、無愛想な少年は無愛想は程遠い笑顔を浮かべて妹の少女と遊んでいる。
 ここアリエスの離宮はすごく洗練された場所……それは今でも忘れられない想いがある場所……。
「ほら、ルルーシュ!!よそ見しないの」
 アッシュフォード学園の生徒会室で、メンバー全員が書類やらを確認しデータを纏めていく。綺麗な金髪に美貌と魅力的なボディスタイルを持ち合わせた少女、この学園の理事長の孫娘で生徒会会長を務めるミレイ・アッシュフォードは、書類から少しだけ現実逃避していた黒髪の少年の頭を丸めた雑誌で軽く叩く。
「痛っ…会長~、叩かないでくださいよ」
 やれやれと肩を竦めたルルーシュという少年は、黒髪に双方の紫電の瞳が印象的でありさらに美貌を兼ね揃えた学園で1、2を争う人気を持っている。
「ルッルーシュ~、罰として……追加ね」
 軽くウインクしたミレイは、自分の分の書類をルルーシュの所へ並べた。反抗する気が起きなかったのか、はたまた抵抗は無駄と理解しているのかルルーシュは「はいはい」とため息を交えて簡潔に返事をした。
 こんやくしゃ……という者になっても、彼の無愛想は変わらない。
 様をつけてみたり殿下とつけたりしても、彼の表情は変わらない。
 いつからだろう……妹に向けられる優しい笑顔を、いつか自分にも向けて欲しいと思ったのは……
 これが恋だと気づくのはまだまだ当分先のこと。だけど二人が政治的取引材料として日本に送られたと知ったのはそれから間もなくだった
 彼の母親は殺され、後ろ盾が無くなった我が家の落ちぶれはあっという間だった。
 暫くして戦争が始まり、彼の戦死と聞いたときはすべてが白黒になってしまった。
 その後再会した彼は、相変わらず無愛想で……だけど前よりも内に秘めてしまう人に変わってしまった。
 だけどその日から……私の世界は再び彩を取り戻した。
 すでに日は傾きオレンジ色の日差しが室内を照らす。生徒会室からはカタカタとキーボードで打ち込んでいる音が聞こえる。室内には二人の姿しかなく、他のメンバーの姿はここには無かった。
「ルル、いつもごめんね」
「いいんですよ会長」
 ルルーシュの隣の席に座り、申し訳なさそうな表情でルルーシュの顔を覗く。視線を合わせる事無くやや呆れたような表情を浮かべたルルーシュは、画面から視線は外さない。そんなルルーシュに少しだけ寂しさとじれったさを覚えたミレイは、両手でルルーシュの頬をむんずと挟みこみ強引に自分の方へ無理向かせた。
「会ちょ……」
「んっ……」
 ルルーシュの言葉を遮るようにミレイはルルーシュの口を、自分の唇で塞いだ。ミレイは両目を閉じて…だけど両手は緊張で震え閉じた目も微妙に震えている。その逆にルルーシュは思考が停止したように両目を見開き、目の前のミレイの向こう側を見ているように焦点が定まらない。
 時間にしてほんの少し、それでも二人にとっては十分すぎるほど長く……短い。
「会ちょ…んん」
 その言葉を言わせないように再度また口を塞ぐ。
「ん…はぁ…」
「ルル…ルル…」
「ミレイ…?」
 ルルーシュの言葉に俯いていた視線を上に上げる。目の端に少しだけ潤みを帯び、その目で目の前のルルーシュを捉えて離さない。
「ルルーシュの事……ずっと…ずっと好きだった。あなたが生きていてくれて……あたしの世界は再び彩を取り戻して……、ルルーシュ好きなの…」
 素直に伝えるのが苦手で、本心がみられるのが恥ずかしくいつもは強引に大胆さの中に隠し、いつもはルルーシュを思う女の子の事を思って一歩後ろに下がる。
「ミレイ…」
「あなたとナナリーの事はこれからもあたしが守る。だから……」
 ミレイの顎にルルーシュは指を添える。少しだけ上向きにさせ自らの唇をミレイの唇に押し当てる。自らの下をその間に滑り込ませ、その事に一瞬驚いたミレイもゆっくりとその進入を許しじゃれ合わせる。二人しかいない室内で、二人の短くも熱くこもった息を吐く音が響く。
 ミレイは察した。不器用なルルーシュなりの告白への返事だと。分が悪いとすぐに逸らす目線は、今は照れ隠しにしか見えないその姿がとても愛おしい。
 昔は婚約者で、一度は戦死したと聞き絶望し、そして今は恋人に……
「ほんとに後悔はないんだな?」
 誰もが振り返るほどの美貌をもった金髪の少女は黒いマントに身を包みながら薄暗い通路を歩く。その後ろを歩く白い拘束服の拘束を外した服を着た、長い緑色の髪を持ち双眸が金色の輝きを放つ女が問いかけた。
「ええ、もちろんよC.C」
「あいつ……のためにか?」
「そうよ。ルルーシュの為に…ね」
「そうか……時間だミレイ」
 淡々と冷めた口調で、通路の両開きのドアを開く。
 これから向かうは戦場。愛する人と日常を守るため彼女は立ち上がった。
 漆黒の仮面を被り、救世主のゼロとして…そして一方ではテロリストのゼロとして。
 黒く美しい髪を持つ少年を守るための騎士として、彼女は黒の騎士団を率いて大国ブリタニアへ宣戦布告した。
彼女の名前にブリタニアが付くのは、もうすこしだけ先のお話。
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