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【2025/05/14 13:18 】 |
無常 と 非情
 遠くで機関銃の無機質な音がミレイの耳に届く。この音でブリタニア軍が日本解放戦線に、攻撃を仕掛けたのだろうとミレイは立ち止まりふとゼロ――ルルーシュの事を思い浮かべる。
 本来であればミレイ自身もKMFに乗り込み、好機を待って奇襲をナナリーと共にかける予定であったのだが、予想外の出来事に直面し今はその当事者であるシャーリー・フェネットと、それを尾行する銀髪の軍人女性をその視界に捕らえていた。ミレイが追う二人も音に気づいたのか、周囲を見回している。特にシャーリーはこういう事に直面した事は無い為、震えているのか強張っているのか動きにぎこちない。

――ここは危ないから、はやく引き返して!!

 言葉に出せない願いを心の中で呟きながら、シャーリーの動向を観察するミレイ。その願いに反するようにシャーリーは、音が鳴り響く方へとゆっくりと足を進めて行く。その後ろを警戒な動きで尾行を続ける女性を見ながらミレイは苦笑いを浮かべた。

――これ以上行くならもう後戻りはできないわよ

 再び二人の尾行を開始したミレイが足を踏み出した瞬間、倒れそうになるくらいの衝撃と轟音が響き渡り、大きな水柱が天へと立ち昇った。水しぶきがミレイの居る位置にまで及びミレイの肌を、髪を服を湿らせる。
 僅かに振動するポケットに入れておいた携帯を取り出し、届いたばかりのメールを開く。送り主はナナリー、今の合図が黒の騎士団参戦の狼煙という内容であった。そして先程よりも銃撃音や爆発音、それに暗くなった夜の港に咲く花火のように、音のする方はやけに明るく灯る。その事に気を取られてミレイが我に戻り周囲を確認するも、シャーリーと女性の姿は見えなくなっていた。

「っんもぅ」

 目標の人物に対してなのか、それとも自分に対してなのかため息混じりに悪たれ、この場から急いで駆け出した。鳴り響く銃撃音と、KMFのランドスピナーのホイール音が徐々に大きくなり、戦場に近づいている事を脳へと認識させる。KMFの大きさから、通れない細さのコンテナ間を縫うように移動し二人の姿を探すが、彼女達も隠れているのか気配すら感じられる、焦りと共に自分に対する怒りと苛立ちが大きくなるのを感じていた。

「どこに言ったのよ」

 周囲への警戒をしつつ、コンテナの死角と死角を移動するミレイの耳に入ってきたのは、何かを貫いたような破壊音とランドスピナーの回転音。コンテナの間から覗き見た先の場所では、三機のKMFの姿がミレイの瞳に映った。手前に紫の機体と、その奥に対している黒と紅の機体。
 紫の機体――グロースターは体勢を崩し地面へと片膝をついた形で相対している。
 黒の機体である昆虫のような頭部を持つ無頼改は、右手に持ったKMFようのアサルトライフルの銃口をグロースターに向けて見下ろしている。
 その後ろに立つ紅い機体である黒の騎士団の要である紅蓮弐式。角ばっている無頼改とは違い、丸みを帯び女性の裸体の様に滑らかな曲線美が、爆炎にてらされて自身の色の輝きを増していた。

――これはのんびりしてられないわね

 そう思ったミレイは三機を気にしつつも、捜索を続けるために自身の右方向へと視線を向けた。

「あ……」

 呟くと同時に思わず身を潜めたミレイの視線の先に、一人の少女が三機のKMFが戦っている方向を見ている立ちつくしていた。

――シャーリー……、やっとみつけた

 急いで走り寄ろうとしたミレイであったが、すぐに目的のシャーリーの姿を見失うことになった。

「きゃっ」

 あらぬ方向からの突風。一つの黒い機影がミレイ達の頭上を越えて三機の戦っているところへと舞い降りたそれは、ミレイは過去に何度か見た機体でもあった。

――あの白いのは! いやそれより今はシャーリーを

 白いKMFの登場により先ほどの位置にシャーリーはいなかったが、かわりにみつけたのは銀髪女性であった。その視線の先には間違いなくミレイの探すシャーリーの姿が……。

――シャーリー

 ほっとしたのもつかの間、事態は急激に変化する。大きな衝撃音、その後に響く地面を強引に滑らされ機体をコンクリートに削られる音がミレイの耳に届いた。無頼改が白いKMFに見事にやられコックピットブロックが、コンテナ郡を乱暴に跳ねやがてその動きを止める。それを見ていた白いKMFには、背後から別のKMFが飛び掛りコックピットブロックへ近づけさせないよう足止めをかけた。それはミレイが良く知っているナナリーが乗る機体。近接に特化した素の機体性能をいかし、白いKMFに距離を開けさせず間髪要れずに互いの攻撃の応酬を繰り広げながら、徐々にコックピットブロックから遠ざかっていく。グロースターと紅蓮弐式の二機も互角の戦いを繰り広げながら、その音と共に小さくなった。

「――しが、お父さんの!」

 戦闘の銃撃音に紛れて、かすかに聞こえた叫びにも似たその声を耳にしたミ礼は慌てて走り出す。そこには震えながらも必死に銃口をコックピットブロックに向けて、シャーリーが立っていた。駆け寄ろうとしたものの、銀髪女性の姿が見えないため迂闊に近づく事もできず、歯痒さを感じながらも今はシャーリーを観察する。

「そいつがゼロか」

 その声の主は、シャーリーの後ろからゆっくりとコックピットから姿を見せている人影へと近づく。シャーリーは恐怖から来る物なのか、はたまた別の理由なのか体が震えておりただただ一点のみを見つめている。ミレイは二人の声が聞こえる位置は保ったまま、背後に周るように静かに歩みを進めた。

「学生自身がゼロだったとは……、しかもブリタニア人」

 銀髪女性は低めに笑い声を上げ、自らの野望を口走る。ブリタニアの貴族になれる等と、女性は満足げな声色で淡々と一人話す。

「ふふふ」

 ミレイが聞いたその笑い声は、銀髪女性とは違う聞きなれた少女のもの。手にした銃を地面へと降下させ静かに笑い声を上げている。

「ははは、あはははは、ルルが……ゼロ。仇、お父さんの」

 肩を震わせ顔を空を仰ぎ、今まで聞いた事がないよな大きな声で笑っている。狂気じみたその笑いに圧倒されていたのは、傍にいた銀髪女性だけでなくミレイも同じであった。

「あはははは」

 変わらず笑い声を上げているシャーリーは、歩みを進めて銀髪女性の方へと近づく。その動きに銀髪女性は警戒を強めるも、それをよそにしてシャーリーは女性とゼロ――ルルーシュの横を通り過ぎた。

「壊れたか? そう言えばこいつはあの娘の男だったな」

 そんな事を呟く女性の背後から、静かにシャーリーの落とした銃を拾いミレイは近づく。気を失っているとはいえルルーシュに触れたその女に対し、ミレイは冷徹なる青い炎を心の内に燃やしながらその銃口を女の後頭部へ押し当てた。その瞬間わずかに身じろいだ銀髪女性の体が、強張っていくのをミレイははっきりと確認した。

「動くな、名前と階級は?」
「私はヴィレッタ・ヌゥ。騎士候だ」
「騎士候?戦闘に参加せずこんなところで何をしている」
「ま、待て。コーネリア総督に報告がある」

 銀髪女性――ヴィレッタはミレイを軍人だと思っているのか、コーネリアに取り次ぐよう嘆願を始めた。だがそのどれも見レイ相手では無意味なことであり、ミレイは話し終えたヴィレッタに対し大きくため息を吐いた。

「理由はわかったわ」
「では」

 願いが聞き入れられたと思い声色を高めたヴィレッタは、その場で反転しミレイの方へと向き直った。そこでヴィレッタの表情が一変する。なぜなら軍人と思って話していたのが、シャーリーと同じ制服を着た金髪の少女であったからだ。

「な……」

 驚きで声を詰まらせたヴィレッタの表情が固まっている。それを見ながらミレイは、口の端をあげ魔女の様ににやりと笑みを浮かべた。

「あなたはルルーシュに触った。それだけで十分」

 ゆっくりとミレイの右人差し指が、銃のトリガーを引いていく。

「ま」

 口を開いたヴィレッタに言葉を最後まで言わせぬように、ミレイは一気にトリガーを引いた。歯切れの良い銃声音が響き眉間を貫かれたヴィレッタは、そのまま紅い液体を飛び散らし港湾のコンクリートの地面へと倒れこんだ。ヴィレッタの瞳がゆっくりと閉じていき、無言の言葉をミレイへ向けて口を魚の様に動かしている。流れ出た液体が、コンクリートに染み渡り、黒い模様を描いていく。

「ふふ、さようなら。ヴィレッタ・ヌゥ」

 完全に動かなくなったヴィレッタを確認し、ルルーシュの方へと駆け寄った。数分後意識を取り戻したルルーシュであったが若干朦朧としていた為、この場に来ていたC.C.に無線連絡を頼み撤退の指示を下した。



 そしてこの日を境に、アッシュフォード学園からシャーリー・フェネットが姿を消した。
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【2010/11/30 05:46 】 | コードギアス 反逆の狂奏愛歌 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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