日本がブリタニアに敗戦してから7回目の秋が訪た。今年の夏は例年以上に長く、その勢いは9月に入ってもとどまる事は無く、10月になって穏やかな気温になりようやく過ごしやすくなる。
ここアッシュフォード学園に通う学生の、夏休みボケもようやく抜けてきた10月の昼下がり。まだボケの抜けていない金髪の美少女ミレイ・アッシュフォードは、クラブハウスにある生徒会ルームにメンバーを呼び集めて、また下らない遊びを興じ様としていた。
生徒会ルームに呼ばれたメンバーといえば、おなじみの生徒会メンバーで青髪のリヴァル、栗色の長髪のシャーリー、赤い髪が印象的なカレン、緑色の三つ網をしているニーナ、敗戦国の日本人でありながら手続きをしてブリタニア人を名乗る事を許可された名誉ブリタニア人のスザクであった。ミレイは生徒会の会長であり、いつもはお気に入りの黒髪の少年ルルーシュもこの場にいるはずなのだが、盲目で足の不自由な妹を迎えに行っている為、現在ここにはいない。
「さあ、みんな♪今日は王様ゲームやりましょう」
そう言ってにやりと笑ったミレイは手際よくゲーム用の棒を人数分準備していた。その棒はすでにミレイの右手に握られており、勢い良くみんなの前に突き出す。この笑顔の時には、何を言っても無駄だということを理解している全員は、嫌々ながらもその棒を引き抜く。
抜いた棒の先に書かれている色や数字を確認する一同は、凝視するあまり一瞬生徒会ルームに静寂が訪れた。その均衡を破ったのはこの中で一番体育会系な少女の声である。
「やったー、私王様だ♪」
そういって喜んでいるのは栗色のロングヘアのシャーリーだった。棒の先が赤く塗られておりなぜか踊りまわっている。
――なに命令しようかなぁって…、んもう~どうしてこういうときにいないのよ!!ルルは…
心の中でそう呟いたシャーリーは、すぐ感情が顔にでるため端から見たら喜んだり落ち込んだり忙しいなぁと呆れてしまう。最後に落ち込んだのを見てなんとなくルルーシュの事だと悟った全員は、あえてその話題に触れないように心に決めた。珍しく全員の心がシンクロしていた…が、それを知る物は誰もいない。
「よし」
そう意気込んだ彼女は、みんなの方に振り返り口を開いた。
「それじゃあ、2番と5番の人…き、きき…キスしてください」
自分の命令とはいえ顔を真っ赤にしながら何とか声を絞り出したシャーリーに、みんなの思考が一時中断させられた。
「えええええ!!」
もちろん大声で叫んだのは病弱美少女設定の純心なカレンである。
「ちょ、ちょっとシャーリー!キスなんて…こんなゲームで」
慌てるカレンをスザクが諌める。
「ええ、いいじゃない。僕5番だし♪相手は誰だろう」
スザクは純粋に楽しそうに満面の笑みを浮かべる。こんなに手ごわくめんどくさい相手をカレンは知らない。
「まぁ、私じゃないからいいけど」
カレンはリヴァルのほうをチラ見する。目を細め恐る恐る棒の数字を確認しているリヴァルに、思わず突っ込もうかと思ったが、あくまでも病弱設定の為カレンは自重した。
「よかった~」
目を細めていたリヴァルは、自分の持つ棒の番号が5ではないことに心底嬉しそうに笑みを浮かべた。
「スザクとキスなんて、夢に出てきそうだしな」
「リヴァル……僕の事嫌いなんだ」
「あ…えっと、私でもない。……もしかしてミレイちゃん?」
ニーナの指摘はずばりであり、ミレイは観念したように棒をみんなの方へ差し出した。
「そうよ、あたしが2番」
そういって一息もらす。
「言いだしっぺはあたしだし、王様の命令は絶対だもんねぇ~」
そういいながらミレイはスザクの正面に移動する。にこにこ顔のスザクは、ミレイが正面に来ると両手でその頬にそっと触れさせる。
「え?」
スザクは顔を近づけ、自分の唇をミレイの唇に重ねた。時間にしては数秒、しかしキスとしては十分に長いその行為に、驚くと共にみな硬直していた。
「ごちそうさま、会長」
「え?あ…え、ええ」
「スザクゥゥゥ!!」
その後暴走状態になったリヴァルを抑えるために、シャーリーとカレンは必死に腕を掴みヴィバルを引っ張る。なぜそうなったのか理解していないスザクは、笑いながらリヴァルに「まあまあ」と言った。
――ど、どうしよう…ルルーシュに知られたくないなぁ…。
――万が一誤解されたら…だめだめ弱気になっちゃ……ガーッツ!!あたしガーッツ
そんなやり取りが行われていたことを知る由も無い黒髪の少年ルルーシュは、妹のナナリーの乗る車椅子を押しながら、生徒会ルームへと向かっていた。
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